私が物心ついた時にはすでに身近に猫がいました。初めて「猫」というものの存在を認知したのは、「ジョニー」という名前のキジシロのめす猫からでした。当時まだ3歳、4歳くらいの私からすると、ものすごく大きな猫だったように思われましたが、そんなに特別巨大な猫ではなかったかもしれません。
我が一家が住んでいたのは戦後のどさくさに建てられた、2階建てで1階にはホルモン焼き屋さんが入っていて、風呂なしトイレ共同、間取りも何も統一性のない木造のアパートでした。その隣で母方の祖父母が店舗兼住居でお好み焼きと駄菓子の店を営んでおりました。 ジョニーは時には祖父母のお好み焼き屋の店舗内で招き猫の役を演じ、時に2階の住居でのんびりと昼寝をし、気が向くと私達の住んでいるアパートに入ってきては、屋根上にある物干し台やその階段でおとなしく寝ている、というような毎日を過ごしておりました。すぐ近所の酒屋さんでもキジトラの猫がいましたが、特に接触もなく、縄張り争いをしているような様子もなかったように思います。